lounge SRG 見た目は大人、中身は子供!
首都圏から近いこともあって、根強い人気を持つ観光地「伊豆」。
伊豆への足として、1990年のデビューから長年親しまれてきたのが「スーパービュー踊り子」です。

先頭の2階建てグリーン車には、展望席あり、サロンあり、個室ありと多彩な設備。
普通車も天井にまで届く大きな窓から迫力ある車窓が楽しめ、車内売店や子供用の遊びスペース、東京方には展望席も。

とにかくいろいろな設備が10両編成にギュっと詰め込まれていて、インテリアもエクステリアも前衛的で挑戦的な列車でした。
(登場時の普通車には、4人まで利用できるセミコンパートメント席もありました)
そんな「スーパービュー踊り子」も登場から30年の年月が経過していよいよ退役の時を迎え、その跡を継ぐ新型観光特急としてJR東日本から発表されたのがこちら。

(画像はJR東日本のプレスリリースより)
JR東日本の新型車両のデザイン担当としてはおなじみとなった「KEN OKUYAMA DESIGN」の手によるもの。
形式は「スーパービュー踊り子」の「251系」を引き継ぎつつも、その次世代型ということでか「E261系」が付与されています。
客室構成はなんと全車グリーン車で、編成中から普通車を排除するという思い切った方向へ。
オールグリーン車のうち、さらに豪華な「プレミアムグリーン車」を1両、グリーン個室も従来の4人用に加えて6人用もある個室専用車を2両つなげるという、完全に高級路線に舵を切ったスタイルとなっています。
「スーパービュー踊り子」にあったサロンルームは、1両まるごとの「カフェテリア」へと進化を遂げました。
後日発表された愛称は「サフィール踊り子」。
宝石の「サファイア」をフランス語読みした「Saphir」を、伊豆特急の愛称「踊り子」に冠して、踊り子シリーズの中でも「上質」「高級」「優雅」のイメージを強調した列車名となっています。
2020年3月のデビューはまさにコロナ禍の真っただ中で、「乗ってみたくても、乗りに行けない」という状況でしたが、9月下旬に思い切って乗りに行ってきました。
東京駅から「サフィール踊り子」1号に乗車します。

ホームの発車表示には、初めて見る「特急 サフィール踊り子1号」の表示。
「8両」の表示も、これまでの踊り子号・スーパービュー踊り子号にはなかったもので、なんとも新鮮な感じです。
10時40分ごろ、上野東京ラインを通って神田方から入線してきました。


初めて見るE261系電車の第一印象は、「予想してたよりもカッコイイ!!」
プレスリリースの完成予想のCGイラストから受けた印象は、特に先頭部はエイリアン顔っぽくて正直良い印象が持てませんでした。
(映画「ヴェノム」っぽいなーとか思ってました)
ところが、実物を目の前にして見てみて、かなりのカッコよさに一発でシビれました。
これはもう、Nゲージ模型で製品化されたら即買いして手元で毎日E261系を眺めたい!
行先表示器はフルカラーLED。


同じ「KEN OKUYAMA DESIGN」のE353系では、行先表示の英語表示がデザイン文字を使った凝った表示だったのですが、E261系ではごく普通の表示になっていました。
折り返しの車内清掃などは無いので、車掌さんの準備が整うとすぐにドアが開きます。
車内には一番乗りで入りましたが、これから「サフィール踊り子」に乗車しようという乗客は、先頭部で記念撮影をしてからという人が多いようで、車内はしばらく無人で静かでした。

今回乗車したのは、8号車のグリーン車。
ご覧の通り、横3列のゆとりある配列で、JR東日本の首都圏の新型特急車両のグリーン車としては久しぶりの横3列配置です。
5号車~8号車の4両がこの配列のグリーン車となっていて、「サフィール踊り子」ではこのグリーン車が「レギュラーシート」ということになります。
「スーパービュー踊り子」号のグリーン車では、1号車が「←山側 1+2 海側→」、2号車が「←山側 2+1 海側→」の配置で、山側と海側で配置が逆転していましたが、「サフィール踊り子」では1人掛け席は全て山側、2人掛け席は全て海側となっています。
今回は運転席の直前にある1人掛け席の1C席に座ります。

座席を逆向きに回転させれば、後ろ展望の最前列となるのですが、その展望席の眺望たるやいかに・・・!?
個室車両とカフェテリアカーを除く全車には、デッキと客室の間にスーツケースなどを置ける大型のバゲージスペースがあります。

「伊豆に1~2泊の旅行に行くにしても、こんなにスペースを広く割くほどの大荷物を乗客の多くが持ち込むか?」と思うほどの広さなのですが、おそらくJR東日本としてはインバウンドの外国人旅行者をこの特急列車に呼び込みたいという思惑があるものと思われます。
客室車端部にある情報表示装置は、フルカラーLEDの2段表示。
文字が大きく、遠くからでもハッキリ文字が読めます。


上段の列車名表示と下段のスクロール表示の間にあるグラデーション風の模様が、E235系の行先表示っぽいですね。
発車時間まで余裕があるので、先頭部まで行ってみました。

記念撮影している人が順番待ちをしているほどなので、人が入らないように先頭車を撮影するのは難しいです。
先頭部分の写真を撮るだけでいいという人は、時間に余裕があるなら、反対側の8番線に行ったほうが撮りやすいですよ。
ちなみに「サフィール踊り子」1号の場合、となりの8番線には10時52分から53分まで常磐線特急「ひたち」9号が入ります。

(上画像は別の日に撮影したものです)
両者は編成両数が違うので先頭部を揃えて並ばないのですが、下り方の先頭車では、「ひたち」9号が出発して動き出したほんの一瞬に「ひたち」と「サフィール踊り子」のJR東日本人気特急が並ぶ瞬間を見ることができます。
E261系のボディーは、表面がまるで鏡面仕上げのようで、周りの風景もカメラを構える自分の姿も車体にハッキリ写ってしまうほど。
暗いところでは車体の紺碧色と窓周りのグレーの違いが判らないほど黒光りした色合いに見えるのですが、日の当たる場所で見ると、紺碧色はメタリックなエメラルドグリーンに見えたり、またしっとりとした空色に見えたり。
とにかく見るたびに違ったカラーリングに見えるので、その時その時で印象が全く異なる不思議な列車です。
4号車には極端に窓が少ない車両が繋がれていますが、これは「カフェテリア」カーです。

眺めの良い海側に窓が多く開けられていて、山側は厨房になっているので、窓がたった2枚しかありません。
4号車の車両記号は「サシE261」。

国鉄時代には食堂車やビュッフェなど供食設備メインの車両には「サシ」「サハシ」といった車両記号を持つ車両が多く誕生しましたが、その後はそのほとんどが姿を消しました。
昭和生まれのおじさんには「ほほぉ~『サシ』とは懐かしいモンだなぁ~」となり、平成生まれの若者には「『サシ』とかヘンな形式!」という感想になるんでしょうかね。
私は「昭和生まれのおじさん」の部類ですが、まさか令和の時代に「サシ」の記号を持つ新型車両が生まれるとは思っていませんでしたよ。
列車名「サフィール踊り子」をフランス語で大書きした「Saphir ODORIKO」のロゴマークも記念撮影ポイントで、乗車前はここもよく混んでいます。

海側だと5号車の乗車口脇に、山側だと4号車食堂車の窓のない厨房部分にこのロゴマークが表記されています。
「ODORIKO」の文字に引っ掛けるように描かれた宝石サファイアのイラストがオシャレですね。
5号車は車椅子対応席を擁した客室となっていて、このように客室内で車椅子の取り回しができるように、かなり広々とした空間になっています。

5号車から8号車のグリーン客室の床面は、真ん中の通路部分が木の風合いが感じられるフローリング風、座席部分は濃いめのマット地にサフィールブルーのストライプが縫い込まれたカーペットになっています。
この床面のデザインだけ見ても、これまでのE259系・E657系・E353系といったJR東日本の新型特急とは一線を画す、見た目にも上質さを感じられるインテリアデザインに力が注がれた列車であることが感じられます。
4号車の「カフェテリア」カー。 JR東日本の公式では「ヌードルバー」とも呼ばれています。

「食堂車」というほど大掛かりな設備ではなく、「カフェテリア」というほど簡易的なものでもなく、その中間に相当する規模の設備で落とし込んでいったらこうなった、という感じでしょうか。
一見すると、街中でよく見るコーヒーショップのような雰囲気のインテリアですが、ここでメインで提供されるのはコーヒーでもなく、サンドイッチやパンケーキでもなく、「ラーメン」というのがかなりブッ飛んでます。
後述しますが、このカフェテリアは完全予約制。
カフェテリアを利用するには事前にスマホサイトでのオーダーを済ませて予約を入れておく必要があります。
ビュッフェのような半フリースペース的な設定だと、始発駅で発車前から席を陣取って長い時間を居座る人(マニア)もいたりすることがありますが、そのような使われ方をされないためにも完全予約制というのは、利用する乗客からも、営業サイドからも理にかなっていると思います。
その一方で、車内で座席から離れて気分転換をするのにフラっと訪れても利用することがほぼできないので、「スーパービュー踊り子」号にあった「サロン室」のような気軽さはありません。
デッキは明るく開放的な雰囲気。

E657系やE353系では濃い木目調の壁にダウンライトの明かりでシックな雰囲気でしたが、E261系では壁はピュアホワイト、サニタリのドアはナチュラルな木目調、床面は大理石調、ドアの内側はサフィールブルーで、デッキからリゾートホテルのような雰囲気が漂っています。
デッキの壁面に貼られた車内設備の案内。

全車両にグリーンマークが付いているのが圧巻です。
個人的には、高級感を狙った車両にこのステッカー式の案内はちょっと残念。
優雅な感じのパネルでも作って、壁に嵌め込めばこの列車のコンセプトに合ったものになるんじゃないかなぁと思います。
洗面台やサニタリスペースの配置は、基本的にE657系やE353系を踏襲しています。
そのため、JR東日本の首都圏の特急を利用している人には、トイレや洗面台の位置に迷うことはなく、また新型車両のトイレに入るとよくある「あれ?流すボタンはどこ?」みたいに、一瞬戸惑うようなこともありません。

意外だったのが、トイレスペースの内側の壁面が真っ白だったこと。
E657系やE353系では木目調の壁紙が貼られていたのですが、この真っ白な壁は場所が場所なだけに汚れが付くと、普段の「白い壁に汚れ」以上に不潔感が出てしまうんじゃないかなと、勝手にちょっと心配になりました。
すべての洋式トイレスペースには、TOTOのウォシュレットを完備。さすがは高級路線で開発された特急車両なだけはあります。

ウォシュレットの操作盤は、最近パブリックスペースやレストランなどのトイレでよく見かけるものですね。
2号車と3号車はグリーン個室車両。1両に4人用個室と6人用個室が2部屋ずつ設定されています。

個室はもちろん眺めの良い海側に設定され、山側は通路になっています。
通路面にも大きな側窓と、天井には天窓があって採光はバツグン。
デッキから続く白い壁と大理石調の床面の雰囲気とも相まって、海辺のホテルの中にいるような感覚になります。
「スーパービュー踊り子」号のグリーン個室は2号車の2階建て1階に3室がありましたが、こちらは1車両まるごと個室のみで構成。
定期の昼行特急列車で、1両まるごとが完全な個室だけで構成される車両というのは東武鉄道の特急「スペーシア」だけにしかありませんでしたが、ここにきて「1両まるごと完全個室車」を2両もつなげた列車が登場したことには驚きです。
こちらは4人用個室。

そしてこちらは初登場となる6人用個室。

昼行特急の個室は、利用するために設定された料金と敷居の高さ、そしてその存在の知名度の低さから、最繁忙期でも売れ残っていることが多々あり、これまでの「スーパービュー踊り子」でも同様でした。
それが「スーパービュー踊り子」の10両編成を、オールグリーンにして8両に減車、さらにそのうち2両を個室専用車にするという挑戦的な方向性に打って出たJR東日本。
「そんなに個室を設定して売れるんかいな」と内心バカにしてたんですけど、なんかとんでもない勢いでこの個室の人気が高いらしく、この日も車内放送で「全席満席」と案内していたんですが、なんと個室ですらも完売。
東京発車時点では数室の個室が空いていたんですが、横浜から満室になっていました。
2号車の4室は「びゅう」の旅行商品専用に設定されているようですので、予約時にみどりの窓口で「満室です」と言われても、「びゅう」で確保している分が売れ残って一般売りに回されたチャンスを狙えば、個室を確保できる可能性はギリでありそうです。
(「びゅう」のサフィール踊り子商品は、電話受付が出発5日前までなので、それ以降に一般販売に回される確率が高いかも?)
さてさて、サフィール踊り子1号はいよいよ伊豆に向けて東京駅を出発です。

特急サフィール踊り子1号 東京駅入線~発車(ミュージックホーン)~品川到着
(つづく)
- 関連記事
-
-
サフィール踊り子に乗ってきました Vol.1 東京駅を出発 2020/10/11
-
サフィール踊り子に乗ってきました Vol.2 カフェテリアでお食事 2020/10/17
-
サフィール踊り子に乗ってきました Vol.3 グリーン車のサービスと設備 2020/10/23
-
サフィール踊り子に乗ってきました Vol.4 プレミアムグリーン車のサービスと設備 2020/10/31
-
サフィール踊り子に乗ってきました Vol.5 再びのカフェテリアと、列車の総評 2020/11/22
-
サフィール踊り子に乗ってきましたⅡ Vol.1 グリーン車で伊東へ 2020/12/21
-
サフィール踊り子に乗ってきましたⅡ Vol.2 グリーン個室で東京へ 2020/12/25
-
京九快速
is Beautiful 伊豆さん こんにちは
コメントありがとうございます。
251系は何から何まで新規製作ですべてが目新しいものでしたが、E261系はボディがすでにE653系由来の形状でそこからできるだけリゾート特化に持っていったという感じです。でもそのあたりはよっぽどのマニアじゃないと気が付かないでしょうから、外観塗装や車内インテリアなどから普通の利用者には「すごいオシャレな新型リゾート特急」という好印象になると思います。
サフィール踊り子に乗ってみての感想はレポートの最終回にまとめて書こうと思っていますが、いい意味でも悪い意味でも「JR東日本らしさ」が全面に出ている列車だなと思いました。
10
26
10:05
is Beautiful 伊豆
こんにちは。
個人的には特殊(過ぎ?)だった251系のリプレイスとして見るとどうにも汎用特急の影がチラつく印象でした。しかしデザインに制約のあるアルミ車体で座席や行先表示器は汎用品、SVOみたいなデッキ構造も使わずにここまでプレミアム感やリゾート感を出したのは驚きです。管理人さんの仰るように、実車を見ると印象がガラリと変わりそうですね。
またG車座席は汎用品といっても利用者の関心は色使い含めた車内デザインに向くと思うので、新規開発するよりも合理的な選択なのかなと。とはいえ他のところに金を掛けたように見えないのがJR東日本らしいというか...。
個室については本当に良くなったと思います。個人的には30年の進化を最も大きく感じる部分かもしれません。
10
25
16:33